イヤホン

いつか自分もやるかもなと思っていたら。
ホームドアの隙間に吸い込まれていく瞬間は、まさにスローモーション。
落ちどころも悪かったのか、駅員さんの捜索の甲斐もなく、とうとう見つからず。

手元に残されたのは、相方とホームを求めてピコピコ明滅させていた右耳。
そんな健気で所在なげなミギーをどうすりゃいいのか。

しばらくするといよいよへんじがない。ただのしかばねのようだ。

あれからひと月。
いまだ捨てるに忍びず。ただのおきもののようだ。